2016年05月20日
東日本地区第94回研究例会(東海大学国際教育センター共催)
更新日:2016年05月20日
今回の東日本地区研究例会は、東海大学国際教育センターとの共催で開催の運びとなりました。下記ご参照のうえ、どうぞ奮ってご参加いただけますようここにご案内申し上げます。
日時:2016年6月11日(土)14:00-17:00
会場:東海大学高輪キャンパス1201教室
交通アクセス:①:JR、京急品川駅下車、徒歩約18分。②:同品川駅より都バス「目黒駅行」乗車、「高輪警察署」下車、徒歩3分。③:東京メトロ南北線、都営三田線「白金高輪」下車、徒歩8分。http://www.u-tokai.ac.jp/about/campus/takanawa/
会費:会員・学生 無料(非会員500円・予約不要)
第1部:研究発表(14:00-15:15)
発表者:檜 誠司 会員
発表題目:「誤訳」が外交関係に与える影響の一考察
=69年の佐藤・ニクソン会談を機密解除公文書で再検証=
要旨:
佐藤栄作総理と米国のリチャード・ニクソン大統領との間で行われたこの会談をめぐっ
ては、ニクソン大統領が日本からの米国向け繊維輸出規制を求めたのに対し、佐藤総理が
「善処」すると曖昧な返事をしたところ、「I will do my best」などと輸出規制に積極的であるといった通訳がなされたとの「善処」言説があまりにも有名である。ニクソンは佐藤総理が輸出規制を「約束」したと判断したものの、日本側はこの「約束」を履行しなかったため、ニクソンがその報復として2年後に日本の頭越しの米中接近外交や、金・ドル交換停止などの「新経済政策」の2つの「ニクソン・ショック」を相次いで発表したとも言われる。「ニクソン・ショック」の引き金になったのがこの「善処」発言だったとしたら、「I will do my best」の通訳は果たして妥当であったのかとかねて議論されている。ポツ
ダム宣言に対する「黙殺」発言の英訳が原爆投下を引き起こしたとの説と並んで、この「
善処」の通訳は「世界の歴史をかえてしまった誤訳」との論考もある。実は佐藤・ニクソ
ン会談の通訳に当たった外務省の赤谷源一氏(当時は大臣官房審議官)はキャリア外交官
だった。歴史的な誤訳を行ったとしたら外交官として出世街道を歩み続ける可能性は閉ざ
されたはずであるが、その後、国際連合事務次長に日本人として初めて就任するという栄
誉にも輝いている。では誤訳があったのか、そもそも佐藤総理はどのように発言したので
あろうか。赤谷氏は首脳会談から1カ月半後に佐藤総理の対米交渉の「密使」を務めてい
た若泉敬京都産業大学教授に「この記録は50年くらいは外に出ないだろう」と述べていた
。しかし、日米両国で近年、情報公開が進み、この会談の遣り取りを日米両国政府の機密
解除公文書で確認できるようになった。そこで、この公文書に基づき、佐藤の発言、その
通訳の妥当性を再検証した結果について説明するとともに、日米外交をめぐるここ数年の
「誤訳」の実例も挙げて論じたいと考えている。
プロフィール:
檜 誠司(ひのき・まさし)
翻訳会社編集顧問、フリージャーナリスト、英日翻訳家。早稲田大学大学院アジア太平洋研究科修了、修士(国際関係学)。時事通信社、米ブルームバーグ通信(Bloomberg News)東京支局で日本語の記者・エディター、英語ニュースの翻訳者・エディターとして勤務。
1992年-96年、時事通信社のニューヨーク特派員。研究テーマは、ニュース英語・外交交渉の翻訳・通訳研究。
第2部:招待講演(15:30-17:00)
講演者:小熊 宏尚氏
講演題目:通信社―その歴史と役割
要旨: ニュース報道の中心に、あるいは背後にいる通信社の存在とその活動は、一般新聞読者・ニュース視聴者にはあまり知られていない。新聞やテレビと違って紙や電波を持たず、活動の大半がBtoBであることや、普通の国では1社か2社(日本では共同通信と時事通信)、大きな国でもせいぜい3社程度しかないという希少性などがその背景にある。
しかし、ニュースの速報や、新聞紙面・ニュース番組制作に通信社は不可欠だ。国内外の各種ニュースを日々伝える日本の新聞社・放送局で、通信社との契約がない社は1つもない事実がそれを裏付けている。また、ニュース配信は国内にとどまらない。自国のニュースを外国メディアに自国語や英語などの国際言語で配信するのも重要な業務の一つである。
大きな事件・事故が発生した場合、通信社は新聞社と違い、テキストや音声を用いて、ニュースの断片をワンセンテンス程度でちぎっては投げるように契約先のメディアに伝えていく。さらに、こうした速報を骨格に記事を肉付けし、内容を何度も差し替え、さらに写真、地図など各種ビジュアル素材を配信しながら、新聞紙面で一般読者が読む詳細な記事へと差し替え作業を続けていく。
本講演ではこうした通信社の国内、海外での歴史や役割を概観しつつ、実際の和文・英文の速報テキストの紹介を通じ、その実務などを紹介する。
プロフィール:
小熊宏尚(おぐま・ひろなお) 共同通信社外信部次長。新潟市出身。東京外国語大学ロシア語学科卒業後、共同通信社に入社。鹿児島、新潟、札幌、東京本社社会部で記者として活動。カイロ(2002~05年)、ロンドン(08~11年)、モスクワ(11~14年)に駐在。14年から現職で国際報道のデスク業務に当たる。
研究例会責任者・連絡先:
藤牧 新[日本メディア英語学会理事・東日本地区地区長、東海大学国際教育センター](fujimakiarata@gmail.com) Lamoquaconsde peta dunia satelit